Arcserve VS Veeam vs クラウド直結バックアップ

【条件別】バックアップアプライアンス(Arcserve vs Veeam vs クラウド直結バックアップ)のランサムウェア復旧時間と年間保守費分岐マトリクス

【条件別】バックアップアプライアンス(Arcserve vs Veeam vs クラウド直結バックアップ)のランサムウェア復旧時間と年間保守費分岐マトリクス

1. 意思決定の背景と実務上の重要課題

情報処理推進機構(IPA)の「情報セキュリティ10大脅威」において、組織向け脅威の筆頭に挙げられ続けているのがランサムウェア被害である。現代のランサムウェア攻撃(人間主導型ランサムウェア)は、単に本番サーバーのデータを暗号化するにとどまらない。攻撃者はネットワーク内に侵入後、数日から数週間にわたって潜伏し、最初にバックアップサーバー、バックアップストレージ、管理用Active Directory(AD)の資格情報を奪取する。そして、バックアップデータそのものを暗号化または削除した上で、本番環境に壊滅的な打撃を与える。

この脅威環境下において、企業のインフラ責任者やシステム管理者は、従来型の「毎日深夜にTapeやNASへバックアップを取る」という運用からの脱却を余儀なくされている。現在求められているのは、以下の2点を両立するデータ保護基盤の策定である。

  1. 目標復旧時間(RTO:Recovery Time Objective)の極小化:感染発覚後、数分から数時間以内に全社業務を再開できるか(即時復旧 vs 24時間以内のデータ全回復)。
  2. データの不変性(Immutable / イミュータブル)の確保:攻撃者の最高管理者権限(Domain Admin / Root)を用いても消去・暗号化できないバックアップ領域をどのように低コストで構築するか。

しかし、市場には「統合型アプライアンス(例:Arcserve UDP Appliance)」「バックアップ専用ソフトウェア+汎用ハードウェア(例:Veeam Backup & Replication + Linux Hardened Repository)」「クラウド直結バックアップ(例:Direct to Cloud via Wasabi / AWS S3)」という3つの大きく異なる選択肢が存在する。これらは初期導入コスト(CAPEX)および年間保守費・クラウド従量課金(OPEX)の構造が根本的に異なり、選定を誤ると「復旧に3日かかり事業停止損失が数千万円に達する」あるいは「保守費用が跳ね上がりIT予算を圧迫する」という深刻な事態を招く。

本記事では、Arcserve UDP、Veeam Availability Suiteの最新仕様書、およびIPAの公開データをベースに、感情論を排除した定量的な意思決定基準を提供する。

2. 【条件別】損得分岐マトリクス(早見表)

自社の「データ容量」「許容されるRTO」「社内エンジニアのスキル」「予算構造」に基づき、最も費用対効果が高いソリューションを特定するための決定マトリクスである。

評価軸 / 条件クラウド直結バックアップ (Wasabi / AWS S3 Glacier連携)ソフトウェア定義型 (Veeam B&R + 汎用HW)統合型アプライアンス (Arcserve UDP Appliance)
推奨データ容量1TB 〜 5TB 未満10TB 〜 100TB 以上5TB 〜 30TB 程度
許容RTO(目標復旧時間)24時間 〜 数日(回線速度に依存)5分 〜 1時間以内(Instant Recovery)15分 〜 2時間以内(Virtual Standby)
不変性(イミュータブル)担保S3 Object Lock(クラウド標準)Linux Hardened Repository (非ドメイン)アプライアンス内WORM/Immutable領域
専任ITインフラ担当不要(非IT担当者でも運用可)必須(Linux/仮想化知識が必要)不要〜兼任で運用可能(オールインワン)
推奨ネットワーク回線1Gbps専有以上(リストア速度に直結)10GbE LAN(オンプレ内高速転送)10GbE/1GbE LAN(オンプレ内高速転送)
費用構造の特長初期費極小、容量増でOPEX増加HW自由選定、VULライセンス(柔軟)初期費一括、5年間保守組み込み型
損得分岐の境界線データ容量5TB未満かつRTO24時間許容なら最安データ容量10TB超かつVM数十台運用でTCO最安専任管理者が不在で即時復旧が必要な場合最適

3. 【徹底対比】主要選択肢の構造・スペック・料金比較

3つのアプローチの構造的相違、イミュータブル機能の実装方式、ライセンス体系、ネットワークトラフィックコストを詳細に比較する。

バックアップアーキテクチャの構造的違い

  1. クラウド直結バックアップ(Direct to Cloud)

    • 構成:エージェントが本番サーバーから直接インターネット経由でWasabiやAWS S3(Object Lock有効)へ暗号化ブロックを転送。
    • 特徴:オンプレミス側に専用ハードウェアを置かないため、初期ハードウェア投資およびオンプレ物理障害リスクがゼロになる。一方で、復旧時はWAN回線を介して全データをダウンロードする必要がある。
  2. ソフトウェア定義型(Veeam Backup & Replication + Linux Hardened Repository)

    • 構成:バックアップ管理サーバー(Veeam)+不変性ストレージ(Linux OS + XFSファイルシステム + 不変属性chattr +i)+本番仮想化基盤(VMware ESXi / Hyper-V)。
    • 特徴:ハードウェアとソフトウェアが完全分離。バックアップデータを書き換え不能にする「Linux Hardened Repository」を自作・構築可能。Veeamの「Instant VM Recovery」により、バックアップストレージ上の圧縮データを直接ESXiにNFSマウントし、数秒〜数分でVMを仮起動できる。
  3. 統合型アプライアンス(Arcserve UDP Appliance)

    • 構成:専用ハードウェア(1U/2Uラックマウント)にArcserve UDP OS・ソフトウェア・重複排除ストレージ・保守サポートがオールインワンでプリインストールされた製品。
    • 特徴:電源を入れてネットワークに接続し、ウィザードに従うだけでバックアップ環境が完成する。「仮想Standby」機能により、アプライアンス内部のHyper-V基盤上に本番VMのスタンバイ機を常時同期・自動作成し、障害時に即座に引き継ぐことが可能。

仕様・機能・コスト比較表

比較項目① クラウド直結 (Wasabi / S3)② Veeam B&R + Linux HW③ Arcserve UDP Appliance
主な対象アーキテクチャ物理/仮想/クラウド混在VMware / Hyper-V / Nutanix物理/VMware/Hyper-V
イミュータブル実装方式AWS S3 Object Lock / Wasabi Compliance ModeLinux Hardened Repo (一時的root権限受渡)組み込みImmutable Storage / UDP Linux Repo
Instant Recovery (即時復旧)不可(クラウドからのローカル展開時間が必要)可能(数分でVM起動)可能(仮想Standby / Instant VM)
復旧速度(10TBデータ時)1Gbps回線で理論上約22時間10GbE LANで約25分〜1時間10GbE LANで約30分〜1時間
ライセンス形態サブスクリプション(容量毎/月)VUL(Universal License:インスタンス数毎)ハードウェア+無制限/容量制限ライセンス同梱
ハードウェア更新サイクルなし(クラウド事業者側で完結)5年〜7年(サーバー更新基準)5年(アプライアンス保守アプライアンス交換)
データ転送(Egress)費用Wasabi: 0円 / AWS S3: 約0.09ドル/GB0円(ローカルネットワーク内)0円(ローカルネットワーク内)
インフラ管理負荷極めて低い中〜高(Linux/ストレージ設計必須)低い(単一ベンダー窓口)

4. 【規模別・年数別】3年間の実額TCO(総保有コスト)シミュレーション

規模別の導入・運用コストを比較するため、以下の3つの試算モデルを設定する。金額は実効割引前のメーカー希望小売価格(MSRP)および標準市場価格に基づく実算推計である(税抜)。

  • 小規模モデル: データ容量 3TB / 物理・仮想サーバー 5台
  • 中規模モデル: データ容量 15TB / 仮想マシン 20台
  • 大規模モデル: データ容量 50TB / 仮想マシン 60台

試算前提条件

  • クラウド直結: Wasabi Hot Cloud Storage(1TBあたり約900円/月)+ クラウドバックアップエージェント(1台月額3,000円)。Egress費用はWasabi仕様(0円)で試算。
  • Veeam B&R: Veeam Universal License (VUL) サブスクリプション + 汎用Linuxバックアップサーバー(Dell/HPE等の標準ラックサーバー)。
  • Arcserve UDP Appliance: 該当容量をカバーするモデル(例: 9000シリーズ等)のハードウェア+5年間定額保守(3年目までの案分算定)。
  • 人件費(運用管理工数): 管理者人件費を1時間当たり5,000円と換算し、保守・監視工数を計上。

3年間のTCO比較表(金額は万円)

規模 / ソリューション項目1年目 (初期+運用)2年目 (運用)3年目 (運用)3年間 TCO 累計
小規模 (3TB / 5台)クラウド直結35212177
Veeam + 汎用HW1202525170
Arcserve Appliance2101010230
中規模 (15TB / 20台)クラウド直結1288888304
Veeam + Linux HW2105555320
Arcserve Appliance3802020420
大規模 (50TB / 60台)クラウド直結380270270920
Veeam + Linux HW450140140730
Arcserve Appliance7804040860

TCO分析およびコスト逆転の損得分岐点

  1. データ容量 5TB未満の小規模環境: クラウド直結(Wasabi等)が圧勝する。3年累計TCOは77万円であり、オンプレミスに高価なバックアップサーバーやアプライアンス(170万円〜230万円)を設置するのは費用対効果に合わない。

  2. データ容量 15TB前後の中規模環境: クラウド直結の累計コスト(304万円)と、Veeam+Linuxサーバー(320万円)のコストがほぼ拮抗する。ネットワーク回線(WAN)経由で15TBのリストアを行う場合の所要時間(1Gbps回線の実効値300Mbpsで約4.6時間〜半日)が許容できるかが分岐点となる。

  3. データ容量 50TB以上の大規模環境: クラウド直結の従量課金累計(920万円)が跳ね上がり、オンプレミスに不変ストレージを構えるVeeam(730万円)およびArcserve(860万円)に対してコスト逆転が発生する。大規模環境においては、VeeamのVULライセンス(インスタンス単位課金)と汎用ストレージサーバーの組み合わせが、最もテラバイトあたりの単価を引き下げられる構造となっている。

🧭 【この分岐とあわせて検討したい意思決定バイブル】
関連する周辺領域の損得分岐点もあわせて確認し、全体の費用対効果を最大化してください。

5. 実務で直面する「3大失敗パターン」と生々しい回避策

現場のIT部門がバックアップ構成を決定・運用する中で、実際に発生している惨烈な障害・運用失敗パターンと、その技術的回避策である。

失敗パターン1: クラウド直結型で有事に「データが戻らない」回線詰まりと隠れ Egress 費用

発生事象

データ容量12TBのファイルサーバーがランサムウェアに感染。クラウド直結バックアップからフルリストアを試みたが、社内インターネット回線(1Gbps共用)の帯域が圧迫され、実効転送速度が70Mbpsまで低下。フルリストアに約15日かかる計算となり、事業が停止。焦ってAWS S3から高速ダウンロードを試みた結果、データ転送アウト(Egress)費用として約1,200ドル(約18万円)の予期せぬ請求が急遽発生した。

生々しい回避策

  • ローカルキャッシュ+クラウドのハイブリッド化: クラウド直結を謳うソリューションであっても、オンプレミス側に廉価なNASまたはローカルディスク(プライマリバックアップ用)を置き、クラウド側はセカンダリ(不変アーカイブ)として運用する。
  • クラウドストレージの選定方針: AWS S3を使用する場合は、あらかじめ「AWS Direct Connect」の緊急帯域確保またはデータ転送無料のWasabi Hot Cloud Storageをバックエンドに選定し、Egressコストのボラティリティを完全に排除する。

失敗パターン2: 「イミュータブル(不変性)を設定したつもり」のWindowsドメイン共有構成による全滅

発生事象

VeeamまたはArcserveを導入し、バックアップ保存先としてWindowsベースのNAS(SMB共有)を指定。不変性機能(WORM)を有効にしていたつもりだったが、バックアップサーバー自体を社内のActive Directory(AD)ドメインに参加させていた。攻撃者がADのドメインコントローラーを掌握した際、Domain Admin権限を使ってバックアップサーバーにログインされ、ストレージボリュームごとフォーマット(物理初期化)されてバックアップが全滅した。

生々しい回避策

  • バックアップインフラの「AD孤立化(Workgroup運用)」: バックアップ管理サーバーおよびストレージは、絶対に本番ADドメインに参加させてはならない。完全なワークグループ構成とし、固有のローカル管理者パスワードを設定する。
  • Linux Hardened Repositoryの徹底: Veeamを使用する場合、バックアップ保存先はLinux OS(Ubuntu/RHEL)とし、XFSファイルシステム上でchattr +iを用いたハードウェアレベルの不変属性を付与する。バックアップ実行時のみ一時的な認証を行い、平時のrootログインおよびSSHポート(Port 22)を完全に無効化する。

失敗パターン3: アプライアンス保守期限切れ(5年目)における「ライセンス二重投資」の罠

発生事象

Arcserve UDP Applianceを導入し5年間運用。5年後のハードウェア保守切れに伴い、後継アプライアンスにリプレースを検討したところ、アプライアンス本体代金に再度バックアップソフトウェアライセンス費用が含まれているため、数百万円の初期投資が再び発生した。旧アプライアンス内に残された過去の長期保存バックアップデータを閲覧・抽出するために、旧機の保守を延長するか、移送作業のために莫大な工数が割かれた。

生々しい回避策

  • ソフトウェア定義ライセンス(VUL / サブスクリプション)の採用: 長期的なハードウェア更新サイクルとソフトウェアライセンスを切り離したい場合、Veeamのようなポータブルライセンス(VUL)を採用する。ハードウェア(サーバー)が5年で耐用年数を迎えても、ライセンスを新しい汎用サーバーに付け替えるだけで済み、二重投資を防ぐことができる。
  • アプライアンス契約時のトレードイン(下取り)条項の確認: アプライアンスを選択する場合は、5年後の更新時に旧機器からのデータ移行費用およびハードウェア更新時の割引率(Trade-inプログラム)を導入時のプロポーザルでベンダーから書面で明示させる。

6. あなたの最適解を導く「意思決定フローチャート」

自社に最適なバックアップアーキテクチャを決定するための判定フローである。以下の4つの質問(Q1〜Q4)を順番に辿ることで、選定すべきソリューションが明白になる。

[START: バックアップ基盤の選定]
  |
  v
【Q1: バックアップ対象の総データ容量は 5TB 以上か?】
  ├─ No  ──> 【Q2-A: 万一の感染時、復旧までに12時間〜24時間かかっても事業は継続できるか?】
  │             ├─ Yes ─> [結論 A: クラウド直結型(Wasabi / Direct to Cloud)]
  │             └─ No  ─> [結論 B: 小規模向けアプライアンス(Arcserve UDP Appliance等)]
  │
  └─ Yes ──> 【Q3: 社内に Linux や仮想化ストレージを構築・管理できるエンジニアがいるか?】
                ├─ No  ──> [結論 C: 統合型アプライアンス(Arcserve UDP Appliance 高容量モデル)]
                └─ Yes ──> 【Q4: RTO(復旧時間)として「数分〜15分以内」の即時VM起動が必須か?】
                              ├─ Yes ─> [結論 D: ソフトウェア定義型(Veeam B&R + Linux Hardened Repo)]
                              └─ No  ─> [結論 C: 統合型アプライアンス または ハイブリッドVeeam構成]

判定結果に基づく推奨アクション

  • 結論 A (クラウド直結型): サーバー数台・小容量環境に最適。CAPEXをゼロにし、Wasabi等のEgressフリーなクラウドストレージ+S3 Object Lockでランサムウェア対策を即座に完了させる。

  • 結論 B (小規模向けアプライアンス): データ容量は少ないが、止まると現場業務が完全にマヒする製造業・クリニック・店舗等に最適。オンプレミスの即時復旧環境をオールインワンで確保する。

  • 結論 C (統合型アプライアンス中・大規模): 専任のLinux/ネットワークインフラエンジニアが不在で、情報システム部門が兼任体制の企業に最適。単一のハードウェア保守窓口で、仮想Standby機能による高速復旧を実現する。

  • 結論 D (ソフトウェア定義型: Veeam + Linux HW): VMware/Hyper-V環境で数十台以上のVMを運用し、高度なITスキルを持つエンジニアが在籍する企業に最適。最安のテラバイト単価で完全不変(Immutable)なストレージ基盤を自作し、RTO数分のInstant Recovery体制を構築する。

7. 現場で迷ったときのFAQ(よくある質問5選とズバリ回答)

Q1: 重複排除機能の圧縮率は、カタログ通り(1/5〜1/10)に実際に出るのか?

回答: ランサムウェア対策を考慮する場合、カタログ通りの重複排除率は出ないケースが多い。特に、すでに暗号化されてしまったファイルや、データベース(SQL/Oracle)、動画・画像データ、圧縮済みファイルは重複排除・圧縮が効かず、圧縮率は1/1.1〜1/1.5程度に低下する。キャパシティ設計時は、安全係数として「重複排除率 1/2(50%削減)」程度を上限として試算しなければ、ストレージの枯渇を引き起こす。

Q2: Veeamの「Linux Hardened Repository」は本当にランサムウェアを防げるのか?仕組みは?

回答: 防げる。原理として、バックアップデータ書き込み時にLinuxのファイルシステム(XFS)レベルで指定期間(例: 30日間)の不変属性(Immutable Flag)を付与する。この期間中は、仮にVeeamの管理サーバーがランサムウェアに乗っ取られ、管理UI上から「バックアップ削除」コマンドを実行しても、Linuxストレージ側が要求を拒絶する。さらに、バックアップ処理完了後にVeeamエージェントの非privilegedプロセスが認証情報を破棄するため、攻撃者がネットワーク経由でroot権限を奪取できない構造になっている。

Q3: AWS S3 Object LockとWasabiの不変ストレージ機能、コストを含めた決定的な違いは何か?

回答: 機能面(不変性の確実性)には差がないが、コスト構造とポリシー管理が大きく異なる。AWS S3 Object Lock(Compliance Mode)は厳格であり、ルートアカウントであっても指定期間の削除が絶対不可能だが、データ取り出し時の「Egress費用(約0.09ドル/GB)」と APIリクエスト課金が発生する。WasabiはEgress費用・APIリクエスト費用が完全に0円であり、転送コストを気にせずテストリストアを実施できるため、バックアップ用途ではWasabiのコストパフォーマンスが圧倒的に高い。

Q4: アプライアンスが物理故障(ハードディスクや電源の破損)した場合、メーカー保守でRTOを満たせるか?

回答: 物理故障の種類による。アプライアンスの保守契約が「オンサイト4時間駆け付け」であっても、マザーボード交換や筐体交換となった場合、復旧作業とバックアップデータの再同期に半日〜数日を要する。したがって、真に「RTO 15分以内」を実現したい場合は、単一のアプライアンスに頼るのではなく、別棟やクラウドへ「2重のレプリケーション(Arcserve UDPのRPS間レプリケーションやVeeamのScale-Out Backup Repository)」を行う構成が不可欠である。

Q5: 既存のNAS(Synology / QNAP等)をそのままバックアップ先にして不変性を担保することは可能か?

回答: 最新のエンタープライズ向けNAS(Synology DSM 7.2以降のWriteOnce機能やQNAPのWORM機能搭載モデル等)を使用すれば可能である。しかし、廉価な家庭用・小規模オフィス用NASのSMB/NFS共有では不変性を担保できない。また、NASの管理画面(Web UI)のパスワードが奪取されると、NASの管理ボリュームごと削除されるリスクがあるため、2要素認証(2FA)の設定と管理者IPアドレスの制限が絶対に必要となる。

8. 結論と今すぐできるアクションプラン

バックアップアプライアンスおよびソフトウェアの選定において、「万能な唯一の正解」は存在しない。自社のデータ容量、許容できる復旧時間(RTO)、そして社内エンジニアリングリソースの有無によって損得分岐点は明確に分かれる。

  • データ容量 5TB未満 & 専任IT不在: クラウド直結型(Wasabi連携)の一択。
  • データ容量 10TB超 & 高度な即時復旧が必要 & エンジニア在籍: Veeam + Linux Hardened Repository のソフトウェア定義型が最高峰のコスパとRTOを実現。
  • データ容量 10TB〜30TB & 構築・保守の手間を最小化したい: Arcserve UDP Appliance によるオールインワン保護が最適。

今すぐ現場で着手すべき4つのアクションプラン

  1. 現行バックアップの「AD分離」の確認 バックアップサーバーおよびNASがActive Directoryドメインに参加していないか今すぐ確認する。参加している場合、直ちにワークグループ構成へ変更し、独立したパスワードを設定する。

  2. 実効RTOの計測(リストア訓練の実施) 現在のバックアップデータから、1TBのダミーデータを本番とは別のテスト環境へリストアするのに「何分かかるか」を実際に計測する。WAN回線経由や既存NASの低速読み出しによるボトルネックを数値化する。

  3. 「不変性(Immutable)」の要件定義とデータ容量の棚卸し 全データの中で「絶対に即時復旧が必要なコアデータ(例: データベース、基幹VM)」と「24時間後の復旧でよいアーカイブデータ」を分類し、必要なイミュータブルストレージの物理容量(TB)を正確に把握する。

  4. 3年間TCOによる3者相見積もりの取得 本記事の「4. 3年間の実額TCOシミュレーション」の基準をベースに、ベンダーへ「アプライアンス」「Veeam+汎用HW」「クラウド直結」の3パターンの見もり作成を依頼し、5年間の総保有コスト(保守更新費・クラウド転送費含む)の比較表を作成する。

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DECISION INSIGHT

【会員限定】「バックアップ アプライアンス 比較 Arcserve Veeam ランサムウェア RTO RPO」で絶対に後悔しないための最終監査チェックシート&裏側の損得試算

バックアップアプライアンス(Arcserve vs Veeam vs クラウド直結バックアップ)のランサムウェア復旧時間と年間保守費分岐マトリクスの比較マトリクスを踏まえ、実際に契約・導入・乗り換えを決断する直前に「見落としがちな隠れコスト」と「撤退ライン」を点検するためのメンバー限定シートです。

1. カタログスペックの比較だけでは見えない「現場の隠れコスト」とは?

目標復旧時間(RTO:即時復旧 vs 24時間以内)とイミュータブル(書き換え不能)ストレージの導入コスト検証において最も失敗が多いのは、「機能の多さ」で選んでしまい、結局2割の機能しか使わずに割高な固定費を払い続けるパターンです。

会員限定・検証マトリクス MEMBER DATA
最終監査項目失敗しやすいパターン(損)成功する意思決定パターン(得)事前確認のポイント
1. 初期・移行コスト いきなり年契約や全社一括移行を強行して現場が混乱 無料枠または単月プランで「1業務・少人数」からスモールスタート データエクスポート(出力)の容易さを確認
2. 実質ランニング費用 基本料金だけを見てオプション課金や上限超過を見落とす 半年〜1年後の利用規模を想定した「トータル年額」で比較 上限に達した際の自動課金・制限仕様を確認
3. 撤退・乗り換え条件 解約手順やデータの抜き出し方を確認せずにロックインされる 「合わなければ30分で元に戻せる状態」を作ってから試す 無料トライアル期間中の解約手続きの簡便さ

2. 決断前に30秒で完了する「損得・最終確認」3項目チェックリスト

01
「いきなり年間契約(年払い)」を選ばず、まずは無料枠か単月契約で試せるか?

年払いの割引(約15〜20%OFF)は魅力的ですが、自分の業務や生活に定着しなかった場合は100%無駄になります。最初の1ヶ月は必ずテスト期間と割り切ってください。

02
本記事の「損得分岐マトリクス」で、自分がどちらの条件に該当するか明確になったか?

もし両方の条件にまたがって迷う場合は、「初期コスト・手間の少ない方」から小さく始めるのが鉄則です。

03
3ヶ月後に「続けるか・解約するか」を見直すカレンダー予定を入れたか?

サブスクやツールの最大の敵は「使っていないのに払い続ける放置課金」です。導入と同時に見直し日をセットしておけば失敗確率はゼロになります。

編集部インサイト:FACT MATRIXでは特定のベンダーに忖度せず、実際の料金改定や規約変更に合わせて「バックアップ アプライアンス 比較 Arcserve Veeam ランサムウェア RTO RPO」の損得分岐ラインを継続的に更新しています。

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執筆・監修: FACT MATRIX 編集部(FACT MATRIX 編集部) / 編集方針と背中押し宣言 / 一次情報検証基準 / 訂正方針

※本記事の損得分岐マトリクスは、公的機関発表資料、法改正基準、各社公式規約・料金表等の一次データに基づき客観的に算出しています。

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